子供の感情爆発(かんしゃく・泣き)に寄り添う。親自身の冷静さを保つマインドフルネス
子育て中の日々は、喜びと同時に予期せぬ出来事の連続です。特に、お子さんの感情が大きく揺れ動き、かんしゃくを起こしたり、泣きわめいたりする瞬間に立ち会うことは、多くの親御さんにとって心労の一つかもしれません。
「どうしてここで泣き出すの」「また始まった」「もう、どうしたらいいの」
そんな思いが頭を駆け巡り、ついついこちらも感情的になってしまったり、早く状況を収束させようと焦ってしまったりすることもあるのではないでしょうか。特に、複数のお子さんがいる場合、それぞれの年齢や個性によって感情表現の仕方が異なり、その全てに対応することの難しさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。
こうした、子供の感情的な爆発が起きた時、親自身がどのように心の平穏を保ち、子供に寄り添うことができるのか。ここでは、マインドフルネスの視点から、そのヒントをお伝えします。
子供の感情爆発に直面した時、親の心に何が起きているのか
お子さんの感情が大きく揺れ動く瞬間は、親の心にも大きな波を立てやすいものです。予測不能な出来事への対応、周囲の目への意識、そして何よりも、子供を落ち着かせたい、守りたいという強い思いが、親自身の感情を揺さぶります。
- 「早く泣き止ませないと」という焦り
- 「どうして分かってくれないの」という苛立ち
- 「私の育て方が悪いのかな」という自責の念
- 「また大変なことになった」という疲労感
こうした感情は、お子さんの感情爆発に「反応」する形で瞬時に湧き上がることがあります。この自動的な反応のままに対応すると、親子の間にさらなる感情的なぶつかり合いが生じたり、後で「あんな言い方しなければよかった」と後悔したりすることにつながりかねません。
マインドフルネスが、この難しい瞬間に役立つ理由
マインドフルネスとは、「今、この瞬間の体験に、意図的に、評価や判断を加えることなく注意を向けること」です。子供の感情爆発というカオスのように感じられる瞬間に、マインドフルネスの考え方を取り入れることで、反射的な「反応」から、意識的な「対応」へとシフトする可能性が生まれます。
感情爆発が起きている状況そのものや、お子さんの感情を「良い」「悪い」と判断するのではなく、「今、目の前で起きていること」「自分自身の心と体に起きていること」に気づくことから始めます。
子供の感情爆発が起きた時のマインドフルネス実践ヒント
特別な時間や場所は必要ありません。その場で、数秒から数分でも取り入れられる実践をご紹介します。
1. まず、「今、自分に何が起きているか」に気づく
お子さんが泣きわめいたり、かんしゃくを起こしたりしているその瞬間に、意識を少しだけ自分自身に向けてみてください。
- 体のどこかに力が入っているか(肩、顎、お腹など)
- 呼吸は浅くなっているか
- 心臓は速く打っているか
- 頭の中では、どんな考えが駆け巡っているか(「うるさい」「もう無理」「早く終われ」など)
- どんな感情が湧いているか(イライラ、悲しみ、戸惑い、不安など)
これらに「気づく」だけで十分です。その感情や感覚を「良い」「悪い」と判断したり、変えようとしたりする必要はありません。「あ、今、私はイライラしているな」「お腹のあたりがぎゅっとなっているな」のように、ただ観察するような感覚です。この「気づき」が、自動的な反応にブレーキをかける最初のステップになります。
2. ほんの一呼吸、「間」を取る
感情的な波に飲み込まれそうになったら、行動する前に、言葉を発する前に、意識して一呼吸置いてみましょう。
- 鼻から息を吸い込み、口からゆっくり吐き出す。
- 可能であれば、数回繰り返す。
この短い「間」が、状況を客観的に捉え、より建設的な対応を選択するための心のスペースを生み出します。深呼吸すること自体が難しければ、「吸って」「吐いて」と心の中で数えるだけでも良いでしょう。お子さんの声を聞きながらでも、目をつむらなくてもできます。
3. 「完璧に対応しよう」を手放す
お子さんの感情爆発を完璧に収めることや、常に冷静でいることを目指す必要はありません。親だって人間です。疲れている時、心に余裕がない時もあります。
「今は冷静に対応するのが難しいかもしれない」と、自分の正直な気持ちに気づくことも大切なマインドフルネスです。完璧でなくても大丈夫。少しでも「気づく」ことができたら、それだけで素晴らしい一歩です。
4. お子さんの感情そのものに「寄り添う」視点
お子さんの感情爆発は、言葉で表現できない「助けて」のサインであることもあります。感情に飲み込まれているお子さん自身も苦しい状況にいる、という視点を持つことで、親自身の心構えが変わる場合があります。
- 「今は、この子は何かとても辛いんだな」
- 「この大きな声は、感情を表現しようとしているんだな」
このように、お子さんの行動そのものではなく、その背景にある感情や意図に意識を向ける練習をすることで、親の心に「何とかしなければ」という焦りだけでなく、「寄り添いたい」という穏やかな気持ちが生まれるかもしれません。すぐに寄り添うことが難しくても、そのような視点を持とうとすること自体が、マインドフルネスの実践と言えます。
日常的なマインドフルネスが、いざという時の支えに
子供の感情爆発のような予測不能な瞬間に心の余裕を保つためには、日頃からマインドフルネスを少しずつ練習しておくことが役立ちます。
- 家事をしながら、歩きながら、今していることに意識を向ける「ながらマインドフルネス」
- 食事の際に、味や香りに意識を集中する
- 寝る前に、一日の出来事や自分の感情を静かに振り返る
こうした日常の中の短い実践が、自分の心身の状態に気づく力を養い、いざという時に反射的ではなく、意識的に対応する土台となります。
まとめ
子供の感情爆発は、親にとって試練のように感じられる瞬間かもしれません。しかし、そんな時だからこそ、少し立ち止まり、自分自身の心と体に意識を向けるマインドフルネスの実践が、親自身の冷静さを保ち、結果としてお子さんへのより良い寄り添いにつながる可能性があります。
すぐに全てがうまくいくわけではありません。感情的になってしまう日があっても、それは自然なことです。「また気づけた」「次は少し意識してみよう」という繰り返しの中で、少しずつ心の余裕が育まれていくものと考えられます。
完璧を目指すのではなく、「今、ここ」でできる小さな一歩から。お子さんの成長とともに変化する子育ての中で、親自身の心を大切にする時間を作ってみてはいかがでしょうか。