「このままで大丈夫?」子育て中の漠然とした不安に効くマインドフルネス
「このままで大丈夫?」子育て中に感じる漠然とした不安の正体
複数の大切なお子さんを育てている親御さんの日々は、めまぐるしく過ぎていきますね。年齢差のあるお子さんそれぞれの成長に合わせ、異なるニーズに応えながら、家事や仕事もこなす中で、「このままで大丈夫かな?」と、ふと立ち止まりたくなる瞬間があるかもしれません。
具体的に何が不安なのかはっきりしないけれど、将来のこと、子供たちのこと、自分のことなど、漠然とした心配が心の奥底に影を落とすことは少なくありません。こうした漠然とした不安や焦りは、知らず知らずのうちに心の余裕を奪い、お子さんとの時間や自分自身と向き合う時間を難しくさせてしまうことがあります。
なぜ、私たちはこのような漠然とした不安を感じるのでしょうか。それは多くの場合、心が「今、この瞬間」から離れ、過去の後悔やまだ来ぬ未来への懸念にさまよっている状態にあるからです。特に子育て中は予測不能な出来事が多く、先のことを考えるとキリがないと感じやすいものです。
マインドフルネスが漠然とした不安に寄り添う理由
このような漠然とした不安に対処するために、マインドフルネスの実践が役立つ可能性があります。マインドフルネスは、「今、この瞬間の体験に、意図的に、評価や判断を加えず注意を向けること」と定義されています。
未来への不安は、まだ起こってもいないことに対する思考です。マインドフルネスは、その思考そのものに善悪の判断を加えたり、必要以上に深掘りしたりするのではなく、「あ、自分は今、未来について不安を感じているな」と、ただありのままに気づく練習です。
「今、ここ」に意識を戻すことで、未来への漠然とした不安から一時的に距離を置き、落ち着きを取り戻すきっかけとなります。これは、不安を完全に消し去ることではなく、不安と共にいても心の穏やかさを保つための心のあり方を育むことにつながります。
忙しい毎日で試せる、不安を和らげるマインドフルネス実践
特別な時間や場所を確保することが難しい子育て中の親御さんでも、日常の隙間時間や「ながら」で取り入れられるマインドフルネスの実践はたくさんあります。
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呼吸に意識を向ける(1分でも): 不安を感じたとき、または一息つきたいと思ったときに、数回深呼吸をしてみてください。吸う息、吐く息に意識を集中します。お腹や胸の動き、空気の温度など、呼吸に伴う体の感覚にただ気づいてみます。これは、思考から離れて「今」に意識を戻す最も手軽な方法の一つです。お子さんが隣で遊んでいる間や、家事の合間など、どんな時でも行うことができます。
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日常動作のマインドフルネス: 食事をする時、食器を洗う時、歩く時など、普段何気なく行っている動作に意識を向けてみます。例えば、食器を洗うなら、水の温度、洗剤の泡立つ音、お皿の触感など、一つ一つの感覚に注意を払います。目の前のタスクに集中することで、過去や未来への思考から自然と離れることができます。
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五感を使った「今ここ」へのグラウンディング: 不安で心がざわつく時は、意図的に五感を使って「今、この場所」に意識を戻してみましょう。
- 見る: 目の前にあるもの(壁の模様、窓の外の景色など)をじっくり観察する。
- 聞く: 周囲の音(子供の声、時計の音、外の雑音など)に耳を澄ます。
- 触れる: 座っている椅子の感触、服の肌触り、手のひらの感覚などに気づく。
- 嗅ぐ: 部屋の匂い、自分の服の匂いなどを意識する。
- 味わう: 飲み物を一口飲む際に、その温度や味、喉を通る感覚に注意を払う。(これは飲食時のみ) これらの感覚は常に「今」に存在するため、不安な思考から意識をそらし、「現在」に繋ぎ止める助けとなります。
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思考を観察する練習: 不安な考えが頭に浮かんだら、「不安だな」「将来のことを考えているな」と、まるで雲が空を流れるように、その思考を客観的に眺めてみましょう。その思考に善悪の判断を加えたり、「どうしよう」と深入りしたりする必要はありません。「あ、思考が浮かんだ」と気づくだけで十分です。思考と自分自身を切り離して捉える練習は、思考に振り回されにくくなる効果が期待できます。
大丈夫、完璧を目指さなくて良い
マインドフルネスは、魔法のように全ての不安を消し去るものではありません。不安を感じること自体は、人間として自然なことです。大切なのは、不安を感じたときに、その感情に飲み込まれず、どのように自分自身の心のバランスを取り戻すか、その手段を一つ持つことです。
今回ご紹介した実践も、「やらなければ」と完璧を目指す必要は全くありません。気が向いたときに、できることから、ほんの数秒でも数分でも試してみることから始めてみてはいかがでしょうか。たとえ最初はうまくいかないと感じても、「まあ、そういう日もあるな」と、その経験自体を判断せずに受け入れることも、マインドフルネスの大切な要素です。
心の余裕が、子供との向き合い方を変える
親自身の心の余裕は、お子さんとの関係性にも良い影響をもたらします。漠然とした不安が和らぎ、「今」に心を向けられるようになると、お子さんの些細な変化や成長にも気づきやすくなり、より穏やかな気持ちでお子さんと向き合うことができるでしょう。
もちろん、子育てには不安がつきものです。その不安を否定するのではなく、「不安を感じている自分も大丈夫」と受け入れながら、少しずつマインドフルネスを取り入れて、心の調律を試みていただけたら嬉しく思います。