上の子・下の子。それぞれ違う我が子への期待に心をざわつかせない親のマインドフルネス
我が子それぞれへの期待と、親の心のざわつき
複数のお子さんを育てている親御さんは、日々の生活の中で様々な役割を同時にこなし、時間にも心にも追われがちなことと思います。お子さんの年齢が離れている場合、それぞれの子の成長段階や個性に合わせた関わり方が必要になり、対応の違いに難しさを感じる瞬間も少なくないのではないでしょうか。
上の子には「もう〇歳だからこれくらいはできてほしい」と期待し、下の子には「まだ小さいから仕方ない」と甘く接してしまう。あるいは、上の子には厳しくしてしまいがちな一方で、下の子にはつい優しくなってしまう、といったご自身の対応の違いに気づき、「これでいいのかな」「平等じゃないかも」と心がざわつくことがあるかもしれません。
我が子への期待や接し方の違いから生まれる心のざわつきや罪悪感は、多くの親御さんが抱える自然な感情の一つです。この記事では、そうした心の揺れとどのように向き合い、穏やかな心で我が子それぞれと関わるためのマインドフルネスのヒントをご紹介します。
なぜ我が子それぞれへの期待や接し方が違うのか
私たち親が、お子さん一人ひとりに対して異なる期待を持ったり、接し方が変わったりするのは、いくつかの自然な理由があります。
まず、お子さんの年齢や発達段階が大きく影響します。上の子が経験してきたこと、例えば入学や反抗期といった出来事を踏まえて、下の子に対しては先回りして心配したり、逆にもう少し頑張ってほしいと思ったりすることがあるでしょう。
また、お子さんそれぞれの個性や性格も関わってきます。慎重な子にはつい手を貸したくなる一方で、積極的な子には見守るスタンスになるなど、無意識のうちに反応が変わることもあります。
そして、親自身のこれまでの経験や、お子さんと築いてきた固有の関係性も影響します。一人目の子育てで感じた後悔や反省を、二人目の子育てに活かそうとする中で、無意識に異なる期待や接し方が生まれることもあります。
こうした様々な要因が絡み合い、我が子それぞれに対する期待や接し方が生まれます。「平等に接したい」という理想と、現実の対応との間にギャップを感じることで、親の心にざわつきや罪悪感が生まれることがあります。このざわつき自体は、お子さんを大切に思うがゆえの自然な心の反応です。
心のざわつきを穏やかにするマインドフルネスの実践
我が子それぞれへの期待や接し方の違いから生じる心のざわつきに気づき、それを穏やかにしていくために、マインドフルネスの実践が役立ちます。特別な道具や長い時間を必要とせず、日々の生活の中で取り入れられる方法があります。
1. 我が子一人ひとりに意識を向ける短い時間
目の前の我が子に意識を集中する時間を持つことから始めてみましょう。例えば、上の子が学校での出来事を話している時、下の子がおもちゃで遊んでいる時など、「今、目の前にいるこの子」に意識を向けます。
呼吸に意識を向けながら、その子の声、表情、仕草などをありのままに観察してみてください。心の中に湧き上がる「こうなってほしい」「あの時はこうだった」といった考えや期待を一旦脇に置き、ただ「今ここ」にいるその子を感じる練習です。数分間でも、この「一人に集中する時間」を持つことで、それぞれの我が子との関わりがより丁寧なものになるかもしれません。
2. 心のざわつきに「気づき」、名前をつける
心にざわつきや不安が湧き上がった時、「あ、今、私は下の子に甘くしすぎているかな、と心配しているな」「上の子の成績のことで焦りを感じているな」のように、その感情や考えに「気づき」、心の中でそっと言葉で名前をつけてみましょう。
感情や考えに「名前をつける」ことは、それに飲み込まれるのではなく、一歩離れて観察する手助けになります。「私は心配している」「これは焦りだ」と認識することで、感情や考えと自分自身を同一視するのではなく、客観的に捉えることができるようになります。
3. あるがままの自分と我が子を受け入れる練習
理想の親像や、お子さんへの完璧な期待を手放す練習をします。私たちは皆、完璧ではありませんし、お子さんもまた、私たち親の期待通りに成長するわけではありません。我が子それぞれに異なる期待を抱いてしまう自分自身、そして、それぞれの個性を持つ我が子の「あるがまま」を、良い悪いという判断を挟まずに受け入れる練習です。
これは、諦めることではなく、現実を正確に見て、そこからどう関わっていくかを考えるための出発点となります。「今、自分はこう感じているんだな」「この子は今、こういう状態なんだな」と、ありのままの現実を認めることから、心の余裕が生まれることがあります。
4. 自分自身の体感覚に意識を向ける
心のざわつきを感じる時、体にも変化が現れていることがあります。肩に力が入っている、お腹がぎゅっとなっているなど、体感覚に意識を向けてみましょう。そして、呼吸に意識を向けながら、体の緊張している部分をゆっくりと緩めていきます。
自分の体と心がつながっていることを意識することで、感情や考えに振り回されそうになった時、一旦落ち着いて立ち止まることができます。
まとめ
複数のお子さんを持つ親御さんが、それぞれの子に対する期待や接し方の違いから心のざわつきを感じることは、珍しいことではありません。それは、お子さん一人ひとりを大切に思うからこそ生まれる、自然な心の反応です。
マインドフルネスの実践は、こうした心のざわつきに気づき、それに飲み込まれることなく、穏やかに向き合うための手助けとなります。日常のちょっとした時間を使って、目の前の我が子に意識を向けたり、湧き上がる感情や考えに名前をつけたり、あるがままを受け入れる練習をしたりすることを通して、心の余裕を育むことができるでしょう。
完璧な親を目指すのではなく、ありのままの自分と、ありのままの我が子たちを受け入れること。そして、未来への漠然とした期待や過去の後悔に囚われず、「今、目の前にいるこの子」との関わりに心を込めること。こうした心の調律が、親自身にとって穏やかな日々をもたらし、それぞれの我が子とのより豊かな関係性を築くことに繋がっていくのではないでしょうか。少しずつ、ご自身のペースで試してみてはいかがでしょうか。